コロプラの営業赤字・最終赤字から見るゲーセクの今とこれから
ソシャゲ業界の構造変化が加速する2025年
ソシャゲ業界の構造変化が加速する2025年
コロプラをはじめとする多くのソシャゲ企業が、2018年から続く厳しい競争環境の中で苦戦を強いられています。コロプラは2025年に入りついに営業赤字だけではなく、最終赤字にまでなりました。
2024年には外部決済導入によるプラットフォーム売上構造の変化、非ゲームアプリの台頭により、モバイルアプリ市場の構造変化がさらに加速しました。
ケイブ、マイネット、klabといった2016年、2017年にゲーセクを沸かせた企業たちの多くが現在も苦戦を続けており、ソシャゲを取り巻く構造的な問題はより深刻化していると見ています。
ソシャゲ業界に何が起きているのか私なりの見解です。
ニーズが多様化し成熟した国内マーケット
ソシャゲ企業の多くが国内マーケットに依存していますが、世界のソーシャル ゲーム市場規模は 2024 年に 151 億 9 千万ドルと評価され、2033 年までに 12.7% の CAGR で 444 億 5 千万ドル成長すると推定されています。
しかし、国内アプリ市場はレッドオーシャン化がさらに進行し、従来のようなひっぱりアクションやカードバトルだけの既視感のある仕組みのゲームで戦える市場ではなくなりました。
裏を返すと、ゲームニーズの多様化がより一層進んでいるということです。カジュアルゲームから本格的なMMORPG、バトルロイヤル系まで、幅広いジャンルが並存する時代になっています。
開発期間の長期化とコスト増加の深刻化
2つ目にゲーム開発期間の長期化と開発運営コストの更なる増加です。
現在のゲーム開発期間は2〜3年と更に長期化し、上記のユーザーニーズが多様化する中で、開発立案当初の想定と市場のニーズとのミスマッチがより発生しやすくなっています。
また、2012、2013年頃からスマホのソシャゲ運営を続けているメーカーでは、10年以上の長期運営タイトルを複数抱えるケースが増え、運営コストや人件費がさらに増大しています。
KLabは新作遅れで難局が続いている状況にあり、品質と開発期間、コストの兼ね合いを取ることがより困難になっています。
海外タイトルの更なる台頭とIP戦略の変化
3つ目は、海外製アプリの台頭がより一層進んでいることです。
カジュアルゲーム・高品質なゲームでもで中国ゲームが勢いを増している中でもあります。例えば、「勝利の女神:NIKKE」などが挙げられます。
一方で、「ポケモンTCGポケット」は、日本発のゲームでもグローバル展開を前提とした高品質なタイトルが続々と日本市場・海外でもヒットしています。
マーケティング戦略も高度化しており、インフルエンサーマーケティングやSNS戦略など、ゲームの質とマーケティング両方の高いレベルでの戦いが求められています。
今後のゲーセク戦略
今後のゲーセク企業への投資は極めてシビアな状況が続くと考えられます。
国産タイトルではモンスターストライクが17位にランクインしており、11年目を迎えた長寿ゲームが依然として高い人気があるように、モンスト、FGOといったビッグタイトルを持つ企業が残存者利益を享受する一方で、大半のソシャゲ企業が多大な運営費や開発費により淘汰される可能性が高まっています。
コロプラも白猫プロジェクトの全盛期には業界の新興勢力として注目されていましたが、それを超える大型タイトルを創出できずに現在も苦戦が続いています。
2025年、2026年はゲーム関連企業の大幅な方針転換や再編が進む状況となっており、開発力、市場適応力、マーケティング力のいずれかが欠ける企業の淘汰が加速するでしょう。
2016年からアカツキに投資を始めた背景は、国内市場の硬直化を予見し、グローバル展開可能なタイトルを持つ企業の重要性を感じていたからでした。
ドッカンバトルは当初国内中心でしたが、シンプルなゲーム性とドラゴンボールIPの力でグローバルヒットを実現しました。しかし、今後同様の日本発グローバルヒットタイトルが生まれるかは不透明です。
日本IPを活用したゲームでは、中国企業が聖闘士星矢やラングリッサーなどで先行している状況もあり、日本企業がその果実を確実に取れる保証はありません。
さらに、VR・ARを活用したゲームやメタバース関連の開発も増加しており、これらはR&Dコストが高く、開発リスクも従来以上に大きくなっています。
これらの状況を踏まえると、2025年から2026年頃には業界全体での大規模な統合・再編が進む可能性が高く、この変革の中心に立てる企業が今後のゲーセクの主軸になると考えています。
国内外両建てで戦えるIP戦略と技術力を持ち、長期的視点で事業構築を進める企業への投資を継続していきたいと思います。
そういった企業を見つける作業もまた面白い投資の醍醐味ですね。